2.フォーメーションのための歩行練習はほんのわずかの移動練習のみ
幼児にとって将来の人格形成と才能の展開のために必要なことは、わずかばかりのスティックワークが上達することでも、切れの良いフットワークが出来ることでもありません、明るい表情と、何にでも感動できる感性、そして集中力と元気さ、体力です。幼児にとっては何時間ものフットワークの訓練より気ままに明るく走り回って遊ぶ事の方が大切です、数分で数百回撥を打つだけで充分に背筋力などが鍛えられます、必要なのは太鼓を打って歩くことに慣れるだけ、フットワークの揃いを気にするより自信を持った表情で音楽と共に移動することです、ポジションラインを作成してそこに子供たちの名前と印をつけてその間を移動するだけで隊形を変えて、後は停止演奏でしっかりと本物の音楽とリズム表現をするのです、フットワークに要する時間を自然や人間形成をするための大事なことに使うべきなのです、あえて毎日練習しなければ出来ないような楽しくない訓練はするべきではありません、幼児期はまだまだこれからの時期なのです。
とは言っても、何をやっているかわからないようなダラダラ移動で音楽もぐちゃぐちゃなんていうことになっても困りますが、ではどのようにすると良いのかを解説します。
まず、オリンピックや国民体育大会の開会式などのマスゲームを思い出してください、数千人単位ですがあのような図形の変化は距離と拍数歩幅をしっかりと整合されて行われるものではありません、ただ、それぞれのブロックが統一された方向角度をそろえて変換するとなると拍数やタイミングを統一しなければ、歯切れの悪い動きと見られてしまいます、つまり走ったり歩いたりの不統一な動きであっても、一見複雑な交差したような複合的な動きであれば統一感は無くても全体的な変化として訴えかけるものがあるのです、それがマスゲームの要素です。
次に歩幅です、以前にある団体が採用していたのは4m8歩=1歩は50cmでしたが、幼児5歳の平均身長110cmで割ると0.454と言う比率が出ます、比率を出さなくても身長の半分に近いと言うことが解りますが、今度は大人のマーチングで考えると5mが8歩ですから62.5センチ、この長さを高校3年生男子の平均身長は170センチだと0.367女子の平均身長は158cmで0.395、なんと高校生でも身長の3分の1強で歩いているのに、幼児が身長の半分近いなんて!これではかなりの辛い訓練を必要とするはずです。
そこで5メートルを12歩だと1歩は41.6cmですから0.378、高校3年男子よりはきついが女子よりは楽チンと言うことです、ちなみに小学校6年生男子は身長144cmで62.5センチで大人と一緒に歩きますから結構辛くて0.434、4m8歩はまだこれよりもっときついと言うことになります、このように0.333で身長の3分の1ですがこの値に近い方がリスクの無い歩行が出来るのです、そして、歩行の障害が少ない状態でリズムをしっかりと打ちながら元気よく歩くと楽曲のビート感に自然と乗ってきます、ただし5mを正確に12歩で歩く訓練をするわけではありません、普通にリラックスして歩くとそうなる歩幅なのです、幼児はこれだけで良いのです、右左が揃っている必要もありません(左足から歩行するように指導はしますが)、右左が揃っていないで音楽リズムを表現することで将来問題になることはありません、楽しくのびのびと表現することが最高なのです。
マスゲームのような動きで普通に歩けば良いと言うことを説明しましたが、出来れば1曲の間はあまり動かないのが目標なので目指す隊形はバランスの取れた美しく飽きの来ない隊形であることが望ましいのです、それには一定の条件を考えて、きちんとしたフォーメーション図を作成する必要があります、これは5m角を一マスとしてそれを1歩単位12等分に分割してあるグラフ用紙を使用します。
手書きで作成したものですが、幼児鼓隊用フォーメーションデザイン用紙とそれを使って作成したシンプルフォーメーションの実例をPDFファイルで作成しましたので、参考にしてご活用下さい。
幼児鼓隊用フォーメーションデザイン用紙
シンプルフォーメーション記載例 1
シンプルフォーメーション記載例 2
この用紙は細かな1マスが1歩となってますが、子供が小太鼓や中太鼓を持った前後幅が約60cm横幅が36cm前後ですから、1歩間隔の横列は密集したラインとしてはかなりしっかりしたラインで当然子供たちの向きも狭い分だけ揃いますが枠打ちが出来ない移動のスタートに時間がかかってその場での個々の方向転換が出来ない、2歩間隔だと回転も同時スタートも可能だがばらつきやすい、カラーガードは横列なら4歩以上のインターバルが必要で(ぶつかると危険なので)、大太鼓は3歩間隔以上の方が打ちやすい、シンバルは密集させた方が音もまとまりがよく美しい、などと歩幅単位で配置を考える方が良いのです。
一マスの中に書ける程度の丸印かわかりやすい記号などで、一人一人の位置を書き込むと、実際の距離でのバランスも解って図面上の形が実際上も同じように出来るのです、注意することは図面上でいくら線を引いてもそれは線ではなく子供たちが一定間隔で並んでいるだけですから、ライン同士があまり近いとラインに見えずにごちゃごちゃとなって、バラバラに立っている墓石のような様相になります、たとえが悪いですが、ラインは平行なら8歩以上離すか接近点でも交差以外は4歩以上離した方が良いでしょう。
楽器の配置については大太鼓、シンバルが、リズムの基本でありフレーズの要ですので全体から等距離の中心近くに配置して、トリオは人数が少ないので出来るだけ前へ、それらを囲むように小中太鼓とカラーガードを配置しますが、カラーガードは高さがあるので背景へ、小中太鼓は前方の方が迫力もありリズムも安定します、実例の1の図ではゆったりした1曲目はカラーガードを正面でたっぷり見せてから、2曲目で入れ替わって音の鋭さと迫力を聞かせる意図があります。
この用紙を使うと曲の何拍目に子供たちがどこまで到達するか計算することが出来ます、要するに距離を測って5メートルを12歩で換算すればよいのです、この図では5メートルが3センチメートルですから、たとえばカラーガードが歩き始めてから先頭の子が到達するのには17.9センチですので3で割ると約6、1拍1歩として6×12=72拍ですから前奏を終わって歩き出したときAメロディー32拍を繰り返してBメロディーに入って2小節目の4拍目に到着する事に計算上はなります、基本的にフォローザリーダー(前の人に追従して歩く)で入場しますので列が伸びることが十分考えられますのでこの人数だと余裕を持って後28拍、Bメロディー以内にはカラーガードが全員到着すると考えればよいのです。
子供たちのポジションを指定しても、その場所を正確に覚えるのは大変な時間を要しますので、ここで新兵器を使用します、新兵器といっても今までの大なり小なり皆さんが使っているものです、そうです、すべてのフォーメーションの子供たちが立つ位置にはビニールシートで作成したラインを引いて短く切ったビニールテープに名前を書いて貼ってしまうのです、だからシンプルフォーメーションなのです、隊形がいくつもあったらラインだらけになってしまって、引くのも覚えるのも大変になりますから、せいぜい2つか3っつの隊形のシンプルフォーメーションでやろうと言うわけです、そのおかげでその作ったラインを引くだけでどこの練習会場でもすぐ美しい形が出来ます(ラインはパートごと隊形ごとに色分けすると解りやすいです)、はじめは結構きょろきょろ下を向いて探したりしてますが、そのうち馴れてくるとなかなか立派に歩いてくれます(アリーナなどの大会ではそのラインのセットが大変ですがお父さんお母さんたち数人に手伝ってもらって体育館用テープの小切などで貼りますが慣れると2〜3分でセットできます、入退場MC時間にかぶせてセットすると何とかなります)。
|